コンテンツマーケティングの流行とライターの低賃金(上)

コンテンツマーケティングの流行とライターの低賃金(上)


「ライターに対して支払われる報酬が不当に安い」
転じて「世間のライターに対する評価が低い」
そんな声を知り合いのライター仲間からよく耳にします。

 

そして、その悩み(愚痴?)を聴くたびに、筆者はいつも違和感を覚えます。理由は、自分自身にそうした感覚があまりないためです。

そこで今回は、この「ライターの報酬が不当に安いのでは?」について考えてみようと思います。

 

そもそもライターの報酬は本当に安いのか?

まずそもそもライターへの報酬がいくらくらいなのか、その相場観を見てみたいと思います。

ここでは、最近なにかと話題のクラウドソーシング系のサイト(クラウドワークスやランサーズなど)で募集されるライティング案件をベースに考えてみましょう。

 

筆者はフリーライターとして駆け出したころ、クラウドワークスをメインに仕事を探してきました。
そのときの感覚値ベースですが、ライティング案件の相場は、1文字単価【 0.15円 】くらいかと思います(プロジェクト、タスクなど依頼の形式を問わず)
ちなみに、最近サイトを使用している知人に尋ねてみたところ、いまも大体そんな感じらしいです。

 

では、これは高いのか? 安いのか? それとも妥当なのか?

 

仮に【 1文字・0.15円 】のライティング案件を受けつづけて、月給25万円を稼ぐとしましょう。

そのためには単純計算、月間で166万文字を書かなければなりません。30で割ると1日・55,555文字くらいです。原稿用紙にして138枚。1 日24時間丸々働いたとして、1時間で400字詰め原稿用紙5.75枚を書かなければ、届かない文字数です。8時間就業ですと、1時間で17.25枚です。

 

この相場観だけ見ると、確かに不当に安いと言えるかもしれません。記事を書くためには非常に多くの作業を必要としますが、それをきちんと踏まえた上で1時間に原稿用紙17.25枚分の文章を書くのは、不可能でしょう。

必要な作業とは、たとえば、

  • ニーズの調査
  • ターゲットの思考特性や行動特性の分析
  • キーワード(記事のテーマ)の選定
  • 記事のスタイルの選定(理論重視 or 具体例重視など)
  • 投稿時間の分析
  • タイトルの立案、記事の執筆
  • 校正

などです。

たとえば、上から3つ目の「キーワードの選定」のためには、媒体がテーマとするジャンルのキーワードを数百個ほど洗い出し、それをひたすらgoogleやYahoo!で検索したり、キーワードプランナーで検索ボリュームを調べたり、googleトレンドで動向を見たりします。これだけでも数日仕事です。

 

このように、記事を書くと言っても、単純に文章を書けば良いわけではありません。裏では読みたくなる記事を書くための綿密な調査や分析が行われており、けっこうな時間がかかるのです。

それに対する報酬が1文字0.15円では、さすがに安いと思いたくなるかもしれません。

(ただ、筆者はこの捉え方は止めた方が良いと考えています。理由は後述しますが、これは稼働時間や過程を重視している=成果に応じて報酬が設定されないからです)

 

安い報酬が嫌なら受けなければ良い

ただ、ここで考慮しておきたいのは「そもそも安値の依頼が嫌なら受けなければ良いだけでは?」ということです。

たとえば、いまクラウドソーシング系のサイトの報酬額を見てきましたが、このサイト上で提案されている報酬額を「安い」と批判するのは、個人的に妙な話だと思います。

 

ここで、企業の営業活動を考えてみましょう。

営業担当者は自分たちの商材に定価をつけており、その値段でお客さんに提案します。
それに対して、そのまま購入するお客さんもいれば、値切ってくるお客さんもいます。そして値切られた場合、その値切り幅が許容できなければ、営業は売りません。

 

筆者は、クラウドソーシング系のサイトは営業プラットフォームであると考えています。
つまり、クラウドワークスやランサーズといったサイトは、仕事を依頼する企業や個人にとっても、仕事を獲ろうとするライターにとっても、営業活動=商談の場であると。

 

つまり、発注者側が価格破壊的な値段で募集しているのは「最初から値切った価格で商品を購入しようとしている」だけであって、その値切られた結果の報酬額が許容できないなら、商品を売らない=受注しなければ良いだけではないでしょうか。営業活動とはそういうものだと思います。

 

逆に、たとえ価格が破壊的で許容できなくとも、
「実績を積むためにはやむなし」
「その企業と付き合うことが今後のキャリアでメリットになる」
などといった理由で、仕事を受けることもあるでしょう。そこも営業と同じですね。

 

クラウドソーシング系のサイトで行われている受注・発注のやりとりは、営業で言えば「値切り交渉が済んだ段階」と言えるでしょう。お客さんは「これ以上の高値だったら、もう買えない」という金額を先に提示しているわけですね。

ですので、自分の能力にそれ以上の価値があり、だから安売りしたくないと考えているなら、単純に応募しなければ良いだけだと考えることができます。

 

クラウドソーシング系のサイト以外での受発注のやりとりでも理屈は同じです。

たとえば、企業に直接、営業をかける場合。これはもう営業そのものですから、自分で自分のスキルを評価して金額を設定、それで相手に提示すれば終わりです。そして値切り交渉の結果、その値切り幅が許容できなければ、引き下がれば良いだけです。

 

報酬の安さを嘆く前に、どうすれば稼げるのか考えた方が生産的

では、なぜライターの報酬が不当に安いといった話が持ち上がるのでしょうか?

 

たとえば、知人のライターの一人は「だって、この値段じゃ生きていけないじゃん」と言っていました。

ですが、これは申し訳ない言い方ですが、お門違いでしょう。
報酬は想定される成果に対して支払われるものであって、筆者たちライターが生きていけるレベルを想定して設定されるものではありません。

 

また「記事を一本書くだけでも、多くの作業が必要。1文字0.15円は安すぎる」という発想はどうでしょうか。
一見すると合理的な意見のように聴こえますが、筆者はあまり同調的ではありません。というのも、この考え方は「時間担保的な発想」「過程重視の発想」ではないかと感じるからです。

 

報酬とは「成果」に対して支払われるものです。つまり最終的な成果物である「記事の品質」さらに言えば「当該記事のPVやCVR」などに対して設定されるべきでしょう。

そして、その記事を一本書くのにどんな作業が行われていたのかは、依頼主からすると「どうでもいい」ことです。

たとえば、ライターが「この記事を書くのに●時間にも及ぶ綿密な調査と、●回のインタビューを行います。だから報酬は●万円でお願いします」と言ったとしましょう。ですが、それはあくまでもライターの都合です。よって依頼主からすると、納得感がありません。

取材費や交通費などの諸経費が別途、支払われる場合もあるでしょう。ですが、それはあくまで「依頼主が期待する成果を上げてくれるという信頼」があるからこそです。単純に「経費がかかるから」諸経費を負担してくれているわけではありません。

 

依頼主は、ライターが「多くの稼働時間をかけること」を求めて仕事を発注するわけではありません。

 

企業が社員を評価するときなどは、取り組んだ過程も重要でしょうが、それはあくまでも「企業」と「自社の社員」の間で成り立つ話です。「企業」と「顧客」の間では成り立ちません(成り立つべきではありません)

 

次回予告:破壊的な価格設定が引き起こす問題

ただし筆者は、報酬設定が破壊的なことが(特に駆け出しの)ライターにとってデメリットがあると考えてもいます。

この点については次回【 11/13(金)】に掲載予定です。