現状、人が死なない平和を平和とは呼ばない。 集団的自衛権の二面性

現状、人が死なない平和を平和とは呼ばない。 集団的自衛権の二面性


安全保障関連法案(以下、安保法案)が、自民・公明両党などの賛成多数により可決されました。ですが、政権と反対派の人たちのあいだの対立はつづいています。

そもそも集団的自衛権とは他国が攻撃された場合、その他国を支援する(守ったり一緒に攻撃したり)というものですが、何をもって集団的自衛権を行うべきなのかはとても難しい問題です。

■3つの未来、日本人は現状を知った上で選ばなければいけない

まずは簡単に現状を整理しましょう。現在、世界では戦争・紛争が存在していますが、終戦直後に比べたらまだ多いですが、冷戦終了後から戦争・紛争は減少傾向にあります。

※戦争・紛争数の推移。最近上昇しているのはイスラム過激派の影響。

The World Is Not Falling Apart

Source: The World Is Not Falling Apart

また、国家対国家の戦いよりも、民間人やテロリストとの戦いになりつつあります。軍と警察の相互的な動きが必要であるということで「ハイブリッド戦争」と言われます。

※テロリストによる死者数推移。

Global Terrorism Index 2014

Source: Global Terrorism Index 2014

集団的自衛権を必要だとする主張の根拠としてよく言われるのは、中国共産党の軍事的な台頭やアメリカの軍事費縮小などが挙げられます。

※中国の軍事費は年々右肩上がり。

A Salutation To Arms: Asia’s Military Buildup, Its Reasons, and Its Implications

Source: A Salutation To Arms: Asia’s Military Buildup, Its Reasons, and Its Implications

※世界の警察を担っていたアメリカの軍事費は下がっていく一方。アメリカ国内の経済が不安定になってる。

America’s staggering defense budget, in charts

Source: America’s staggering defense budget, in charts

※それでもアメリカの軍事費は圧倒的に高い。

Militaries Have Peak Oil in Their Sights

Source: Militaries Have Peak Oil in Their Sights

ただこれらはあくまで、イスラム過激派や中国共産党には軍事力でないと対処できないと考えてたり、他国を守らなければ日本にまで影響があると考えてたりするために集団的自衛権が必要なのであって、もし仮に外交や他の方法でそれらに対処できれば必要ないとも言えます。軍事費は税金でまかなわれていることも大事な論点です。

つまり、守りたい他国があるのかどうか、守ることができるほどの余裕が日本にあるのかどうかが集団的自衛権を必要とするのかどうかになります。では整理しましょう。

1、他の国と協力していくべきなのか。(集団的自衛権を行使できる/する)

2、自分の国だけを考えていくべきなのか。(集団的自衛権を行使できない/しない)

3、自分が住んでいる国を最も大切に考えながら他国とも協力する。

それとも新しい安全保障を模索していくのか。

※安倍首相と自民党の解釈で法案が通っているため、憲法の解釈は「与党次第」になってしまっている現状を受け止め、ここではいったん集団的自衛権に焦点を合わせます。

※テロリストは国家ではないので憲法の解釈上、対処できることになってるのですが、各国の安全保障に影響のあるセクターなのでここでは考慮します。

■1、他の国と協力していくべきなのか。

collective_defense

簡単に言えば、軍事費を増強して、自衛隊一人あたりの戦力を上げ、中国が手に入れたい他国の領土や、テロリストが攻撃したい国を守ったり、日本の軍事力を見せつけて相手を抑止するということです。

具体的な改善策としては、

・少子高齢化の問題から人口と年齢で勝つことは難しいので、人工知能を持ったドローンの大量生産、サイバー空間と宇宙空間から情報戦の制圧していく。

・そのため義務教育からプログラミング学習を必修にする。

・自衛隊の採用者数を増やすために、自衛隊の映画・アニメ・ドキュメンタリー番組などを製作

・徴兵制は不人気なので、民間企業による軍需産業を育てていく。

・愛国心を高めるために、外国人が日本をとても尊敬している番組を作ったり、「日本人であるだけで幸せ」と思ってもらうようにする。

・敵と出会ったときに躊躇せず対処できるようにするために、普段から敵対してる人たちを悪く見せる。

直接的な兵士と武器の改善だけではなく、

・軍事費の財源を確保するために、国民の所得を上げる必要がある。産業を発展させる。

・兵器の改善をはかるために、科学技術の発展させる必要がある。助成金や研究費など。

・他国との国際的な関係性を強めるために、多言語学習を必修にしたり、他国の宗教を勉強する時間を設けたり、資源競争にも勝てるようにする。

※東北の震災以降、自衛官候補生の応募者数が増えた。

防衛省防衛白書 自衛官の採用について

Source: 防衛省防衛白書 自衛官の採用について

※増えるサイバー攻撃。

THE IMPORTANCE OF DATA (PART I)

Source: THE IMPORTANCE OF DATA (PART I)

※ドローン市場は今後も伸びていく一方。

THE DRONES REPORT: Market forecasts, regulatory barriers, top vendors, and leading commercial applications

Source: THE DRONES REPORT Market forecasts, regulatory barriers, top vendors, and leading commercial applications

しかし一方で、その相手を抑止するための軍事的な威嚇が、相手に刺激を与え、戦争・紛争に繋がってしまう可能性も否めません。

平和な状態が抑止力のおかげなのかどうかは判断しづらいにも関わらず、軍事力のおかげで戦争になってしまうと、集団的自衛権はあまり良いものとは見られないでしょう。

集団的自衛権のマトリクス

※集団的自衛権は行使されると戦争になる事例が多い。

集団的自衛権の行使事例

Source: 集団的自衛権の行使事例

※多くの国が軍事同盟を持っている。

Wiki Collective security

Source: Wiki Collective security

※アフガン戦争でアメリカは多くのお金を使った。

The 13-Year War

Source: The 13-Year War

では次に2つ目の選択肢を見ていきましょう。

■2、自分の国だけを考えていくべきなのか

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簡単に言えば、戦争・紛争に巻き込まれれば、自国の国民がたくさん死んでしまう可能性が高まるし、お金もたくさん使うし、むしろ武力以外の方法で間接的に平和にできれば良い、ということです。他国が戦争・紛争に遭っても、自国が安定していけるような状態も目指す必要があります。

具体的な改善策としては、

・輸入に頼ってる製品を少なくする。備蓄しておく。

・輸入が滞っても困らない製品だけを輸入に頼る。

・石油や天然ガスに代わるエネルギー資源を開発する。

・食糧自給率を上げておく。

・輸出で稼いでる分のお金を自国で稼げるようにしておく。

・他の国が自国からの輸出に依存していれば相手の国へ優先度を持たせることができる。

・他国が自国を守ってくれなくても自国だけで守れるように軍事力を最低限強化しておく。

・他国が戦争・紛争にならないようにその原因を改善する。(例、貧困削減)

※海外の平和に投資してきた日本

外務省ODA予算 外務省ODA予算 外務省ODA予算

Source: 外務省ODA予算

※一部でだんだん増える地産地消

北陸農政局

Source: 北陸農政局

※ミドリムシをエネルギーにしていく動きもある。

eublena「僕らの相棒、ミドリムシ」

Source:eublena「僕らの相棒、ミドリムシ」

しかし一方で、自国と密接な国が攻撃された場合自国に大きな影響が出ることになります(例えば石油が高くなったり)。また今まではアメリカの軍事力が弱まる傾向がなく、同盟も結んでいたので、経済や福祉に集中することができていました。

しかも今まで自国のことに集中してはいたものの、失われた20年と言われる時期があったり、社会保障政策は上手く行ってこなかったりもしました。他国ともっと多方面から協調していたほうが良かったのかもしれません。

※日本が輸入に頼ってる物

JFTCきっずサイト「日本の主な輸出入品」

Source: JFTCきっずサイト「日本の主な輸出入品」

※日本の食糧自給率はカロリーベースで39%

農林水産省 食糧自給率とは

Source: 農林水産省 食糧自給率とは

※日本のエネルギー自給率はかなり低い。

関西電力 日本のエネルギー事情

Source: 関西電力 日本のエネルギー事情

※日本のエネルギーの輸入先。これらの国を守らなければいけない。

日本の石油・石炭・LNGの輸入元をグラフ化してみる(2015年) 日本の石油・石炭・LNGの輸入元をグラフ化してみる(2015年) 日本の石油・石炭・LNGの輸入元をグラフ化してみる(2015年)

Source: 日本の石油・石炭・LNGの輸入元をグラフ化してみる(2015年)

※守るべき海上交通路が存在する。

Booming Shipping Network

Source: Booming Shipping Network

※日本人海外旅行者は増加傾向。

観光庁 日本人海外旅行者数

Source: 観光庁 日本人海外旅行者数

※中国との経済的な関係は強いので中国との戦争は無いかも?

JFTCきっずサイト「日本の主な貿易相手国」

Source: JFTCきっずサイト「日本の主な貿易相手国」

■3、自分が住んでいる国を最も大切に考えながら他国とも協力する。

簡単に言えば、どの国や集団が自国にとって不利益になるのかしっかり見定め、その対策のため必要であれば軍事的な措置をとる。それと同時に自国と密接な他国と協調しながら、自国と他国の生活水準や幸福度を上げることです。

ですので、軍事的な措置をとるため、誰か確実に殺します。そのおかげで自国と他国の平和は守られます。部屋に殺虫剤を撒けば虫は死にますが、害虫によって嫌な思いをしなくなるのと同じです。その殺虫剤は買ってきたわけです。それは税金でまかなわれる防衛費と同じ意味になります。

しかし、どんなテロリストでも、どんな独裁者でも、同じ人間だと思うかどうか、思えるかどうかで、この3つ目の選択肢もある意味「限界」なのです。誰かが死ぬおかげで作られる平和は本当に平和なのでしょうか。

■最後に

70年間、対話が大事だという人々から新しい防衛技術や戦争のルール、もしくは新しい戦争防止のための教育方法が生まれているでしょうか。いや生まれていません。

集団的自衛権の賛成派の目的は「抑止力」と「他国を守ること」であり、反対派の目的は「武力以外の方法の平和(殺さない・殺されない)」と「自国の経済や福祉への集中」です。

この3つ以外の新しい方法を選ぶのであれば本気で模索し、対話していくべきですが、現状はデモに参加して憲法を維持するのみです。憲法は攻撃してくる相手にとっては意味をなしません。

おそらくこのまま集団的自衛権を行使できるようになるかと思います。今までもあまりデモによる政策への影響はなかったのと、衆参両院とも自民党が過半数をとっていて、議院内閣制をとっているからです。

逆に言えば、小選挙区制でもあるため国民の選挙時の判断次第では政権をコントロールしやすくなっているので、今まで以上に政治に興味をもって理性的に政治家を選んでいかなければいけなくなりました。

集団的自衛権をどう運用するのかは国民次第です。

※下記イベントを開催します!

イベントのお知らせ「防衛アイデアソン」

【防衛×アイデアソン】<第3回くもラボ>「デモ」ではなく「議論」を!武力でも理想論でもない、未来の防衛について考えよう!/9月26日(土)18:00〜【@虎ノ門COMx(新橋駅ほか)】

※集団的自衛権、賛成反対リスト。11個の論点。

※戦前、戦時のおおまかな選択肢(ロジックツリー)

※他にも論点や考え方があれば教えてください!