過酷な状況にいる親と子どもはどんな気持ちなのか?児童虐待の二面性

過酷な状況にいる親と子どもはどんな気持ちなのか?児童虐待の二面性


近年、世界的に児童虐待は社会問題として取り上げられています。

※世界では4人に1人の子どもが身体的虐待を受けてる。

Global status report on violence prevention 2014

Source: Global status report on violence prevention 2014

※アメリカでは虐待による被害は減ってきているが未だ多く存在する。

Child Trends Data Bank Child Maltreatment

Source: Child Trends Data Bank Child Maltreatment

※アメリカでは1日4~5人が虐待やネグレクトで亡くなっている。

Child Abuse Statistics & Facts

Source: Child Abuse Statistics & Facts

課題先進国と言われる日本でも多くの児童虐待が存在します。(これらは報告されたものに限りますので、例えば未発見の虐待、未対応の虐待、虐待かもしれない不審死、事故死として処理された虐待死等は除きます。)

※虐待による死亡事例は年間50件を超え、1週間に1人の子どもが命を落としています。

オレンジリボン運動 子ども虐待について

※死亡した子どもの主な加害者内訳:約半数は実の母親

オレンジリボン運動 子ども虐待について

Source: オレンジリボン運動 子ども虐待について

ただ、これらのデータは子どもを優先させた見せ方です。子どもは非力で一方的に暴力を受けるだけということから子ども側ばかり焦点を当てられてしまいます。しかしもし仮に、子どもの命を失わせてしまうほどの状態に陥っている親側に焦点を当てたらどうなるでしょうか。

本当に児童虐待をなくすためには、子どもだけじゃなく、その親にも寄り添う必要があります。親は自分で問題を引き起こしている意識が無かったり薄かったりするために、手遅れな状態になってから気づいてしまうのです。今回は児童虐待の二面性を紹介します。

1、虐待する親が子どもに与える影響

2、育児を受ける子どもが親に与える影響

■虐待する親が子どもに与える影響

Child Abuse

まず、児童虐待(Child Maltreatment)には全部で5種類あります。もちろんこれらは実際には複合的に行われます。

・身体的虐待 physical abuse

・性的虐待 sexual abuse

・ネグレクト(無視や放置) neglect and negligent treatment

・精神的虐待 emotional abuse

・利己的利用、搾取 exploitation

次に上記の虐待による子どもへの影響を簡単にまとめました。大きく分けると3つです。もちろん虐待の程度によって症状は変わります。

1、大きな怪我。重篤な場合は死に至る。

2、知的発達の低下や遅れ。

3、様々な心理的な影響。

例、不安定な対人関係、低い自己肯定感、攻撃的・衝動的な性格、落ち着かない、酷いトラウマ(PTSD)、大人のようなふるまい、記憶障害、もうろうとした意識、等

Source: 厚生労働省 「子ども虐待対応の手引き 虐待の子どもへの影響(5ページ)」参考

※虐待を受けた子どもは受けていない子どもよりも脳みそが小さくなる。

書籍 児童虐待と傷ついていく脳 いやされない傷

Source: 書籍 児童虐待と傷ついていく脳 いやされない傷

※叩かれた子供はIQが低下する。

Children Who Are Spanked Have Lower IQs, New Research Finds

Source: Children Who Are Spanked Have Lower IQs, New Research Finds

※性的虐待を受けた子どもは、将来アルコール依存や薬物依存、精神的な疾患になりやすくなる可能性がある。

Childhood Sex Abuse Increases Risk for Drug Dependence in Adult Women

Source: Childhood Sex Abuse Increases Risk for Drug Dependence in Adult Women

これで虐待が子どもにとってどれだけ悪影響かお分かりになったかと思います。では親がこれらを理解したら虐待が無くなるでしょうか?そんな簡単な問題ではありません。それでは次は親側の視点でみてみましょう。

■育児を受ける子どもが親に与える影響

Hard Child Care

子育ては親にとって本当に大変なことです。その大変さに耐え切れずに虐待に陥ってしまう親もいれば、何とか子どもを大人になるまで育てることができる親もいます。つまりそれほど、虐待というのは遠い出来事ではないということです。ではどんな親や環境が虐待に陥りやすくしているのでしょうか。

※注意:以下の項目を全て満たさなければ子どもを生んではいけないわけではない。あくまで虐待につながった人の理由を集めたものにすぎず、これらに当てはまった人全員が虐待をしたわけではない。

1、保護者側のリスク要因

1)妊娠、出産、育児を通して発生。

2)保護者自身の性格や精神疾患等の身体的・精神的に不健康を通して発生。

望まぬ妊娠や10代の妊娠であり、妊娠そのものを受容することが困難な場合である。

望んだ妊娠であったとしても、妊娠中に早産等何らかの問題が発生したことで胎児の受容に影響が出たり、妊娠中又は出産後に長期入院により子どもへの愛着形成が十分行われない場合がある。

保護者が妊娠、出産を通してマタニティブルーズや産後うつ病等精神的に不安定な状況に陥ったり、元来性格が攻撃的・衝動的であったり、医療につながっていない精神障害、知的障害、慢性疾患、アルコール依存、薬物依存等がある場合や保護者自身が虐待を受けたことがある場合が考えられる。特に、保護者が未熟である場合は、育児に対する不安やストレスが蓄積しやすい。

※日本では虐待を受けて死亡した児童が平成25年3月までの約10年間に全国546人にのぼり、うち約2割(111人)は生後1カ月以内に死亡。内7割は望まない妊娠。

産経ニュース、多い「望まない妊娠で実母が」虐待死、10年間に546人 厚労省

Source: 産経ニュース、多い「望まない妊娠で実母が」虐待死、10年間に546人 厚労省

※アメリカでの妊娠の約半分が望まない妊娠

Unintended Pregnancy in the United States

Source: Unintended Pregnancy in the United States

※各国の10代の出産の割合

Preventing Teen Pregnancy in the US

Source: Preventing Teen Pregnancy in the US

2、子ども側のリスク要因

乳児期の子ども、未熟児、障害児、何らかの育てにくさを持っている子ども等である。

※育児で大変なこと1位は「自分の自由時間・睡眠時間が取れない(42.3%)」

育児において、妻との関係で気を付けるべき5つのこと

Source: 育児において、妻との関係で気を付けるべき5つのこと

3、家庭(養育)環境のリスク要因

未婚を含む単身家庭、内縁者や同居人がいる家庭、子ども連れの再婚家庭、夫婦を始め人間関係に問題を抱える家庭、転居を繰り返す家庭、親族や地域社会から孤立した家庭、生計者の失業や転職の繰り返し等で経済不安のある家庭、夫婦の不和、配偶者からの暴力等不安定な状況にある家庭。

※日本の地域ごとの核家族の状況。1位は東京。

Rate of Nuclear Families in Japan

Source: Rate of Nuclear Families in Japan

※日本で虐待が発覚した母子家庭のうち約半分は生活保護受給者

児童相談所が対応する虐待家族の特性分析~被虐待児及び家族背景に関する考察

Source: 児童相談所が対応する虐待家族の特性分析~被虐待児及び家族背景に関する考察

※各国の女性がどれぐらい守られてるかを示した図。薄い緑ほど守られてる。

Wiki: Epidemiology of domestic violence

Source: Wiki: Epidemiology of domestic violence

■最後に重要なポイント

1、虐待をした親を責めても解決しない。

どんなに悲惨で酷い虐待事件を起した親を非難しても、虐待を受けた子どもは虐待を忘れることはありませんし、亡くなってしまった子どもの命も戻ってきません。大切なのは身近にいる母親や父親が子育てしやすいように周りの人で助けてあげることです。どんな犯罪加害者も「絶対的な悪魔」ではなく同じ人間です。

2、虐待を受けた子どもも幸せになることができる。

自己肯定感が低かったり、知力が弱かったりしても、一生に不幸というわけではありません。過去に虐待を受けた事実は変わりませんが、将来どんな人間になるかはいくらでも変えることができます。まずは自分自身が幸せになりたいかどうか。

※参考資料: 厚生労働省 子ども虐待対応手引き 第2章 発生予防(日本語)

※参考資料: Child Welfare Factors That Contribute to Child Abuse and Neglect(English)

※他にも論点や考え方があれば教えてください!